はじめに告白しておきます。私たちは設計会社なので、移転や改装の依頼をお引き受けすることで成り立っている会社です。けれども、初回のヒアリングで「いまの段階では、移転以外の選択肢を先に検討しませんか」とご提案する場面が、実は少なくありません。

創業以来15年、200を超える案件をお手伝いしてきて、移転の意思決定を「正しいタイミング」で行えた会社と、「数年早かった/遅すぎた」会社の差が、はっきりと見えてきたからです。前者と後者を分ける問いを、今日は3つ書いてみます。

問い 1 ── その不満は、空間で解決できるものですか?

「会議室が足りない」「コミュニケーションが減った」「採用が苦戦している」。移転の相談に来られる経営者の方々が口にされる悩みは、おおむねこの3つに集約されます。けれども、本当に空間の問題でしょうか。

会議室が足りないのは、会議体そのものが多すぎるのかもしれません。コミュニケーションが減ったのは、評価制度や1on1の頻度に起因しているのかもしれません。採用が苦戦しているのは、ポジションの定義や報酬水準の問題かもしれません。

空間で解けることは、空間で解く。空間で解けないことは、空間を変えても解けない。

私たちが社内で繰り返し言い合っている言葉です。この線引きを最初に丁寧にやらないと、移転というプロジェクトが「解決」ではなく「気分転換」になってしまいます。

問い 2 ── 3年後に組織はどう変わっていますか?

移転計画は通常、検討開始から実際の竣工まで12〜18ヶ月かかります。さらに、新しい空間で組織が馴染むまでに半年〜1年。つまり、移転を決断した瞬間から「効果が出始める」までに、2〜2年半が経つのが普通です。

その間、組織の人数は何倍になっていますか。職種構成はどう変わっていますか。リモートワークの比率は今と同じですか。これらの問いに、半分でも答えられない状態で移転を始めると、竣工した瞬間に「もう手狭」「もう余っている」のどちらかが起きます。

問い 3 ── いまの空間で「やれるだけのこと」をやり切りましたか?

レイアウト変更、家具の入れ替え、運用ルールの改定。コストでいえば移転の10分の1以下で試せることが、まだ残っていませんか。

移転は劇的な変化を生みますが、その劇的さゆえに「効果検証」が難しくなります。何が原因で組織が変わったのか、空間の効果なのか、移転に伴って同時に走った人事制度改定の効果なのか、判別がつかなくなる。だから私たちは、移転前に「やれることをやり切る」プロセスを推奨しています。

それでも、移転すべきタイミングはある

ここまで「移転を急がないで」という話を続けてきましたが、もちろん、移転すべきタイミングは存在します。

たとえば、3年以内に人数が確実に倍になる事業計画があるとき。たとえば、現状の物件で構造的に解決できない問題があるとき(空調・天井高・耐震)。たとえば、ブランディング上、立地そのものを動かす必要があるとき。これらは、空間で解くべき問題です。

私たちが大切にしているのは、「移転すべきか/すべきでないか」をご一緒に整理することです。その上で、移転すべきと判断されたら、私たちの本領であるところの設計と施工管理で、全力でお手伝いします。

移転を検討中の方、あるいは「移転以外の選択肢を相談したい」という方も、初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。